Feb 03, 2007

「しゃべれどもしゃべれども」(佐藤多佳子)

この本、かなり前から「べた褒め」状態で本屋にいたわけですよ。で、あらすじとか見てみると「落語家くんのとこに、口下手な人が落語を習いに来る話」ってことやったので、「あー、ほんで、何やかんやあって、みんなが口下手を克服して『よかったよかった』って話なんやろー。それはよかったよかった」と読んだ気になって、ほったらかしてたのであります(装丁もそんなに心惹かれんかったし)。

で、このたび映画化ちうことで、またまた本屋の表舞台に文庫が山済みされておりまして。「そーいえば読んでなかった」と思って、その「よかったよかった」話に手をつけてみたのですが、いやー、マジでよかったです。そしてワタクシの勘が、大ハズレやったこともわかりました。「本の雑誌はそんなことで『年間1位』にしないぞ」と怒られそうです。すんませんです。

お話としてはあらすじ通りで、落語家の三つ葉くんのとこに「うまく喋れるようになりたい」ちう人が何故か集まってきてしまいます。「落語なら教えてあげられるよ」ちうことで、たまに集まって「まんじゅうこわい」の話を教えることになります。

最初は落語を教えることに一生懸命やった三つ葉くんですが、いろんな個人的なとこに顔を突っ込んでいくうちに、4人がただ「しゃべれるようになりたい」わけじゃなくて、「しゃべれるようになったら、お先真っ暗な現状から抜け出せるかも」と思ってることが見えてきます。

三つ葉くん自身も、大好きな落語をやってるのに、お客さんにいまいち受けが悪くなっててお悩みチウ。上から教える立場にいるけど、結局は他の人と同じで「お先真っ暗」状態にいることには変わりなく、みんな「自分が嫌い」状態なのですね。そんな状態から三つ葉くんがジタバタし、まわりも巻き込まれ、三つ葉くんも巻き込まれ、話が進んでいくってことになります。

大雑把に言うと、真っ暗な中で体育座りしてる状態から、「ちょっとあっちにいってみようかな」とそれぞれが立ち上がろーと動き出したとこまでを、1冊の中で丁寧に丁寧に書いてる話であります。なのでスッキリ全てが解決ってわけやないけど、一回座っちゃってから立ち上がる勇気を出すのに、それなりに時間がかかるってのがわかる人には「うんうんうん」とうなづけるし、見守りがいがあるっちゅーもんであります。

実際、読んでて「応援モード」がどんどん強くなりまして。「応援モード」が出るっちうことは、かなり登場人物が好きちうことでもあり、三つ葉くん始め、習いに来てる4人も癖がありまくりやねんけど嫌いになられへんねんなー。その他の登場人物も稽古嫌いで厳しい師匠やら、粋で達者なおばあちゃんやら、兄弟弟子やら、落語に出てきそうなええキャラで。村林のおかんがちょっと気に入らんかったけど。

ってなわけで、一見テーマはシリアスでありますが、三つ葉くんの落語な空気が全編に漂ってるので、読んでてポカポカしてくるのが、これまたよい感じ。三つ葉くんの「いろんなとこに首を突っ込んでは勝手にジタバタしてる度合い」は夏目漱石の「坊ちゃん」っぽいかなー(あれは田舎やけど)。悪態つきまくりの4人も全然仲良しじゃないけど、話が進むにつれてうすーく連帯感が出来てくるあたりもお見事っす。

映画化されちゃうみたいですが、なんか映画やと「見栄えがするとこだけつまんで『よかったよかった』に着地」ってされそうで、いやなのであります。合間合間の地味なとこがええのになー。「三つ葉」は「喧嘩っ早くてお人よし」やのに国分太一ってどーやろ。師匠が伊東四朗ってのはおっけー。でもばーちゃんは八千草薫じゃないなー。うちの中では奈良岡朋子やったんやけどなー。映画よりはNHKの「たけしくん、ハイ!」の枠で連ドラやるのが、似合いそーと思っております。

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