Oct 04, 2005

「殺しの双曲線」(西村京太郎)

推理小説好きの人なら、1回は目にしたことがあるであろー「ノックスの十戒」ってのがあります。これはロナルド・ノックスさんが定めた「探偵小説が守るべきルール」であります。ちと羅列してみます。

 1.犯人は話の最初から出ている人物でなければならない。しかし、読者が疑うことのできないような人物であってはならない。

 2.推理方法に超自然的な力を用いてはならない。

 3.秘密の部屋や通路を用いてはならない。

 4.未知の毒薬や難しい科学上の説明を要する装置を犯行に利用してはならない。

 5.中国人を登場させてはならない。(当時西洋の人は「中国人は術を使う」と思ってたかららしい)

 6.偶然や第六感で事件を解決してはならない。

 7.探偵自身が犯人であってはならない。

 8.探偵は読者に提出しない手がかりで解決してはならない。

 9.探偵のおろかな友人であるワトスン役は彼自身の判断を読者に隠してはならない。なお、ワトスン役は一般読者よりごくわずか知能のにぶい人物がよい。

10.双子や一人二役はあらかじめ読者に知らせておかなくてはならない。

ま、早い話が「正々堂々と読者をビックリさせましょうね」な基本ルールなのであります。さわやかっすね。フェアプレー精神ってやつっすね。

で、「殺しの双曲線」ですが。この「十戒」を踏まえた上で、冒頭に堂々と「この作品のメイントリックは、双子を利用したものです」って書いてます。正々堂々としてるっしょ。自信のあらわれってやつっすね。そんなん言われたら「その挑戦、受けて立っちゃろー」って思うやないっすか。ワタクシだけっすか?(大概敗れ去りますが)

でも普通は最初にこんなん書かれたら、双子出てきただけで「あー、こいつらが悪いことしよんねやー」ってわかっちゃって面白くなさげと思うっしょ。ところがどっこい。そーんなもんやございません。みなさんが「双子トリック」と聞いて、何を想像されたかはわかりませんが、もーねー、そんなんちゃうねんて。

初めて読んだんは大昔やけど、読み終わった時は「参りました」って感じでありました。なんちゅーか「ハンデもらってボロ負け」気分を味わいました。「後出しで負け」ちうか。終わり方もすごく印象的やったっすね。余韻残りまくりっすよ。ちょっと社会派かな。

西村京太郎の、ボコボコ出てるトラベルミステリには全く興味がないワタクシでありますが、トラベルミステリを書き出す前の若かりし頃の本はすごく面白いっす。この「殺しの双曲線」を筆頭に「天使の傷痕」(江戸川乱歩賞)、「名探偵シリーズ」(「名探偵も楽じゃない」「名探偵が多すぎる」「名探偵なんか怖くない」「名探偵に乾杯」)は、今読んでも十分面白いっす。

「最近の本格推理が面白くない」とお嘆きで、西村京太郎を「2時間ドラマの人でしょー?」と名前で引いて読んだことのない方、是非この辺の昔のやつ、行ってみてはいかがでしょうか(ワタクシ、アマゾンの中古で「1冊7円」とかで買いなおしました)。本格好きの人には特にお勧めっす。

ただねー、この「カバーデザイン」と「タイトル」は何とかならんもんかなー。昔のこととは言え「よーこれを買ったよな」って思うもん。その昔「本格推理もん」に大きくはまってたワタクシ、多分裏のあらすじで「本格」って書いてあったから買ったんやろけどね。えらいわワタクシったら。

※ クリスティの「そして誰もいなくなった」のオマージュでもあるんで、読んだことない人は、ちょっとネタバレがあるのをご了承くださいな。

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