May 08, 2005

「七回死んだ男」(西澤保彦)

この本を楽しく読もうと思った場合、ある「お約束」を突っ込まず理解する必要があります。「ドラえもん」では「タイムマシンが存在すること」とか、「銀河鉄道999」では「機関車が空を飛ぶ」とか、「そんなんありかよー」と言ってしまうと始まらん「お約束」はいろいろありますが、この「七回死んだ男」でのお約束は「キュータローくんはたまに、1日を9回繰り返すことがある」ってことです。

繰り返しができる範囲は晩の12時から丸一日であります。大体不定期に起こるので、次の日に起きたときに、昨日と同じ会話や出来事が繰り返されたときに、「あ、2回目や」と気がついてるわけなのですが、9回目に起こったことが「最終決定」として次の日に引き継がれるわけです。キュータローくん以外の人は9回目に起こったことだけを事実として過ごしてるので、例えば6回目の時に親とケンカしても、9回目でケンカしなかったら、親にはケンカした事実は残らないのであります。

とまー、ややこしい説明をしましたが、ワタクシがこの能力を授かったら、真っ先に競馬に走るかなー。その日のうちに結果がわかるわけやから、9回目の時にそれを買っておけばいいんやもんね。ベタですが(キュータローくんは高校生なので無理)。

さて。前置きがすっかり長くなりましたが、「七回死んだ男」はそんな能力を持ってしまってるキュータローくんが、お正月に親戚が集まる新年会に参加したところからスタートであります。おじいちゃんにしこたま飲まされて、ゲロゲロで苦しくて、起きてみたらまた前の日の繰り返しっぽいぞっと。「まーたゲロゲロになるのなんか、やなんじゃー」とちょっと違う行動を取ってみたら、なんとおじーちゃんが殺されてしまいます。

「うーわー、これはあかんやろー」ってことで、「どーゆー行動を取ったら、じーちゃんは死ななくてすむのかしらん?」と、ベストの状態で9回目を過ごすため頑張るのでありますが、「こっちに行ってみたらこっちでえらいこっちゃー」のドツボにはまりまくるため、読んでるワタクシとしては最後の最後まで「キューちゃんどーするのー?」と手に汗握り、時にはあまりの報われなさに腹を抱え、キューちゃんの行く末を見守ってしまうのであります。

最初の方は繰り返しのお約束の説明があるので、ちょっとかったるいですが、じーちゃんが死んでからはとにかく先が気になるので最後まで一気に読んでしまうこと間違いないっす。一息つけたかな?ってとこでも「へ?今何おっしゃいました?」な謎が提示されたりすんので、安心できないのでありますよ。

この本「日本推理作家協会賞」を「魍魎の匣@京極夏彦」と最後まで争って負けちゃったらしいのですが、そんな評価がとってもピッタリであります。ちうかそれって「どっちもモビルスーツやから」って「ガンダム」と「ヤッターマン」を比べてるよーなもんで。比べるんやなくて同評価するべきもんやと思うなー。古本屋にでも図書館にでもあるはずなので、お時間のある方はキューちゃんと一緒にドキドキしてみてくださいませ。

西澤保彦には他にも「ある場所に複数の人間が入ったら、その人らの人格が法則に沿って次々入れ替わる」ってお約束を持った「人格転移の殺人」とか(文庫版での森博嗣の解説が傑作)、「お約束」ありの話が他にもいろいろあるので、興味のある人は見てみてねん。

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