Feb 16, 2005
「『おかしな二人』 岡嶋二人盛衰記」(井上夢人)
ワタクシは「小説 = 推理小説」ちうくらいの推理小説好きなのでありますが、推理小説ってのは当たり外れが結構多いので困り者なのでありますね。何時間かかけて読んで「うっそー」ってなやつも結構あったりなんかします。なので、好きな本に当たった場合、その作家さんの作品の総なめに走ったりしがちです。
で、「岡嶋二人」ちうのはそのワタクシの好みに合った、お気に入りの推理小説作家さんです。でももう新作が出ることはないのであります。なぜなら「解散」してるから。ってなわけで、この本は「岡嶋二人(おかしな二人の変形)」の片方の井上夢人さん(今は単独で推理作家)が、「『岡嶋二人』のできるとこから終わるとこまで」をまとめた本であります。
岡嶋二人の歴史を追いかけたこの本は、大きく「盛の部」と「衰の部」の2つの部で構成されてます。「徳山諄一」と「井上泉」の二人が出会って、何やかんやで小説を書こーちうことになり、「岡嶋二人」として「焦茶色のパステル」で江戸川乱歩賞を受賞するまでが「盛の部」。「受賞後から解散まで」が「衰の部」であります。仕事ってなった段階からすぐ「衰」が始まっちゃうのでするね。
小説なんか書いたことないお金のない二人が、ネタを持ち寄り小説に仕立て上げるとこまでの四苦八苦は、同じく小説なんか書いたことないワタクシから見たら「まー大変」(一言かよ)状態でする。確かに小説って、車を出せばその知識は必要やし、場所を出せば土地感もいるし、スポーツを出せばルールもわかってないとあかんし、推理小説なのでトリックも必要やし、と、大雑把じゃない具体的な知識がすんごい必要になるわけで。おまけにそれをワクワク読める文章にして、原稿に書いて、清書して・・・。具体的にやること多すぎやねーん。ちょっと気が遠くなりますな。
一年に一回の「江戸川乱歩賞」に向けて、えんえんと1本の小説について話倒して、草案を作って見直して、また変えてって方法でやっと1本長編を書くってペースが出来たあたりで、遂に4回目にして受賞するわけなのですが、そっからいきなりペースが乱れちゃいます。受賞していきなり「一週間後に短編をひとつ」とか言われちゃうわけですね。もう読んでるワタクシでも「それは無理やろー」って思わずにはいられませんが、それが現実なのですなー。プロの世界ですなー。
推理小説にも「本格派」(トリック重視)とか「社会派」(人間関係・社会情勢重視)とか種類がありますが、岡嶋二人のはどっちかちうと「本格派」っすね。なので具体的なトリックをひねり出してから、「そのトリックをどー使おーかー」ってのを膨らましてってな作り方をしてるわけなのですが、乱歩賞投稿時代には「こーゆー案はどーかな」とか「それにこんなんを加えてみよっかー」とか、話し合う時間が取れたりしたのに、デビュー後はとにかく「何日から書き始めたいから、何日までに草案をくれ」みたいに、必要に迫られてネタ出しも分業になって、徐々に歯車が狂ってくのであります。
確かにねー、一人で全部やるほうが早いんよね。「一人で出来るなら」が条件やけどね。井上さんもそこいらで大悩みであります。すんごくもめたっぽくて。この本は井上さんが書いてるので、井上さんが徳山さんに書いた意見メールの数々が、そのまま乗っけられたりしてますが、まー何ちゅうかねー。とても他人がそれについて感想どーこー言えるもんではありません(夫婦ゲンカに感想かくよーなもんなので)。でもリアルであります。「作業分担」ってのをする場合の「比重のかかり方」を、「自分の方が重い」って思い始めるとそーなるよなー。って感じで見につまされますね。実際がどーなのかは別として。
ま、そんな「盛衰記」でありますが、当然作った作品に対して「まずこの案が浮かんだ」とかトリックネタバレ満載で書いてありますので、この本は「岡嶋二人」の本をある程度読んだ人向けであります。なので、読んでみたい人は先に作品を読むのがお薦めなのですが「何がお薦めやねーん」ってなると思うので列挙しましょう。
「あした天気にしておくれ」、「焦茶色のパステル」、「なんでも屋大蔵でございます」、「99%の誘拐」、「チョコレートゲーム」、「そして扉が閉ざされた」、「クラインの壷」あたり、いかがでしょーか。長編から短編集までいろいろあるし、全部文庫になってるので入手もしやすいかと思われます(挙げたのは個人的に好きなもんであります)。「面白い本ないかなー」ちう人で岡嶋二人を読んでなかった人はラッキーっすよ。一度お試しくだされ。
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